カテゴリー: 短編

踊る小人

亀甲石みたいに 「十五番で爪つけをしてる子」と彼は教えてくれた。「でもくどくつもりならあきらめたがいいぜ。亀甲石みたいに硬いからな」 (『蛍・納屋を焼く・その他の短編』収録) 心の中にある普段使われていなくて、そんなもの…

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ローマの遺跡みたい 電車は混んでいて、おまけによく揺れた。おかげで夕方彼女の部屋に辿りついた時には、ケーキはローマの遺跡みたいな形に崩れていた。 (『蛍・納屋を焼く・その他の短編』収録) 歯を一本一本とりはずして磨いてる…

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緑色の獣

何かすごく大事な、言い忘れていた古いメッセージを私に伝えようとするみたい 獣は床の上でのたうちながら、口を動かして最後に私に向かって何かを言おうとした。何かすごく大事な、言い忘れていた古いメッセージを私に伝えようとするみ…

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納屋を焼く

まるで成長しすぎた虫のように スポーツ・カーには中年の男が一人で乗っていた。車は太陽の光を浴びてとても気持ちよく光っていて、まるで成長しすぎた虫のように見えた。 (『蛍・納屋を焼く・その他の短編』収録) 年老いた醜い双子…

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神の子どもたちはみな踊る

まるで夢の中でとりあえずしつらえられた あたりには人の生活の気配はなく、まるで夢の中でとりあえずしつらえられた架空の風景のようだ。 古い革のように 気がつくと喉の奥が古い革のように乾いていた。 引用:『神の子どもたちはみ…

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沈黙

まるで嫌な臭いのする虫を呑み込んでしまったような 胃の底の方に何かどんよりとしたものが溜まっていて、ちっとも集中できないのです。まるで嫌な臭いのする虫を呑み込んでしまったような気分でした。 (『レキシントンの幽霊』収録)…

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氷男

なんだかずっと遠くの方で風の音でも聞こえたみたいだな、というような あなたはスキーはしないのですか、と私はなるべくさりげない声を出して氷男に尋ねた。彼はゆっくりと顔を上げた。なんだかずっと遠くの方で風の音でも聞こえたみた…

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品川猿

春の夕暮れどきの月のようなほんのりとした みずきの話に熱心に耳を傾け、ときどき何かを考えるようにぎゅっと顔をしかめるのをべつにすれば、春の夕暮れどきの月のようなほんのりとした微笑みを、終始口もとに浮かべていた。 (『東京…

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偶然の旅人

打ちそびれた句読点のように 時間がたって、女の顔やプジョーの像が消えたあとでも、そのほくろのかたちだけはくっきりと残った。その小さな黒い点は、目を開けても目を閉じてもそこに浮かび、打ちそびれた句読点のようにひそやかに、し…

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三つのドイツ幻想

まるで、巨大なペニスを讃えるといった格好 白っぽいブロンドで、ブルー・アイズで、胴がきりっとしまっていて、笑顔が可愛い。彼女はまるで、巨大なペニスを讃えるといった格好でビールのジョッキを抱え、我々のテーブルに運んでくる。…

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