緑色の獣

何かすごく大事な、言い忘れていた古いメッセージを私に伝えようとするみたい

獣は床の上でのたうちながら、口を動かして最後に私に向かって何かを言おうとした。何かすごく大事な、言い忘れていた古いメッセージを私に伝えようとするみたいに。
(『レキシントンの幽霊』収録)

体が紡ぎだす暗黒の予兆のように

ふと気がつくとどこかずっと遠くの方からぼそぼそという、奇妙にくぐもった音が聞こえてきた。最初のうちはそれはまるで私自身の体の中から聞こえてくるように思えた。何かの幻聴のように。体が紡ぎだす暗黒の予兆のように。
(『レキシントンの幽霊』収録)

まるでコーヒーカップがいっぱい載ったテーブルを軽く揺すったみたいに

獣が首を傾けると、緑色の鱗がかたかたかたかたと音を立てた。まるでコーヒーカップがいっぱい載ったテーブルを軽く揺すったみたいに。

引用:『緑色の獣』 村上春樹