世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

ほっそりとした冬の鳥のように

彼女が一枚ずつ服を身にまとっていく様は、ほっそりとした冬の鳥のように滑らかで無駄な動きがなく、しんとした静けさに充ちていた。

巨大な古代生物のしわだらけの死体のように

かつては美しい水をたたえ荷船やランチが往き来した大運河も今はその水門を閉ざし、ところどころでは水が干あがって底が露出していた。白くこわばった泥が、巨大な古代生物のしわだらけの死体のように浮き上がっている。

郵便を失った郵便局か、鉱夫を失った鉱山会社か、死体を失った葬儀場のような

建物のひとつひとつには際立った特徴はなく、何の装飾も表示もなく、すべての扉はぴたりと閉ざされて、出入りする人の姿もなかった。それは郵便を失った郵便局か、鉱夫を失った鉱山会社か、死体を失った葬儀場のようなものかもしれなかった。

引用元:『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』 村上春樹

読者レビュー:村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を読む。| 喩: 剛毅朴訥仁に近し