日出る国の工場

教育委員長が視察に来た小学校の教室みたい

しかしそれにしても静かだなあ。なんだか教育委員長が視察に来た小学校の教室みたいである。

四ツ谷警察署の取調べ室と平塚駅長室とのちょうど中間くらい

どう好意的に見ても印象的な部屋とは言いがたい。部屋の造作は四ツ谷警察署の取調べ室と平塚駅長室とのちょうど中間くらいである。

ライチャス・ブラザーズとホール&オーツくらい

1970年の僕の基本的ワードローブと1986年の僕の基本的ワードローブのあいだには、だいたいライチャス・ブラザーズとホール&オーツくらいの差しかないと考えていただければよろしいかと思う。

北の森のオオツノジカのように

この十五年あまり、映画館で見るアクション映画の予告編みたいな速度でいろんなファッション・スタイルが生まれては消えていったが、僕はそのあいだ北の森のオオツノジカのように進化とは無縁に生きてきたわけである。

廃棄された原子力船のように

革靴はいちおう茶と黒のリーガルのウィングチップを一足ずつ持っているが、これらは廃棄された原子力船のようにクローゼットの中でじっと眠り込んだままである。

引用:『日出る国の工場』 村上春樹