めくらやなぎと眠る女

まるで狡猾な動物みたいに

新しい型の大型バスはまるで狡猾な動物みたいにアスファルト道路にぴったりと貼りつき、くぐもった音を立てながら斜面をかけのぼっていった。
(『蛍・納屋を焼く・その他の短編』収録)

ずっと昔に聞いた雨の音のように

しかし今こうして、小首をかしげるような格好で左耳をじっと僕の方に向けているいとこの姿を見ていると、僕は妙に心を打たれた。ずっと昔に聞いた雨の音のように、彼の不器用に誇張された一挙一動が、しっくりと僕の体になじんだ。
(『蛍・納屋を焼く・その他の短編』収録)

引用:『めくらやなぎと眠る女』 村上春樹