品川猿

春の夕暮れどきの月のようなほんのりとした

みずきの話に熱心に耳を傾け、ときどき何かを考えるようにぎゅっと顔をしかめるのをべつにすれば、春の夕暮れどきの月のようなほんのりとした微笑みを、終始口もとに浮かべていた。
(『東京奇譚集』収録)

引用:『品川猿』 村上春樹